強引な次期社長の熱烈プロポーズ
第2章

1.上司から男の人へ



小さい頃から文房具が好きだった。

小学校の頃は可愛いキャラクターやにおいつきのペン。
中学校の頃は色んなカラーやラメなんか入ったペンをたくさん持ってた。
大人になっても好きなことには変わらなくて、こうしてショーケースに飾られるようなペンに憧れを抱いてる。

私にはまだ程遠い―――いつか自分の最高の1本に巡り逢えたら…

あんな素敵なペンが似合う大人になりたい。


例えるならば彼のように。







「おーい。百合香ー」

買ってきたコンビニ弁当の袋に手を付けずにぼーっとしている百合香にたまらず声をかけたのは綾。


「あ!はい!なんですか?」
「なんですか?じゃないでしょ。変、変よ。確実に。」
「変?!」
「昨日やっぱりなんかあったんじゃないの」


声のトーンを落として、ぼそぼそと百合香に冷やかしの視線を送りながら何か期待している綾の目。


「なんにもないですってば!」


正確には“さっきまで”。
エレベーターの出来事が頭からも、体からも離れなくて、必死で百合香は目の前のお弁当に向き合う。






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