マスカケ線に願いを
エピローグ
マスカケ線に願いを
マスカケ線とは、広辞苑には枡掛筋で載っている、長寿の手相のこと。
感情線と知能線が合体して一本化した、手をまっすぐ横に突っ切った線のことである。
マスカケ線を持っている人は、我が強かったり変わっている人が多いらしい。
歴史の教科書に出てくるような人の手相も、マスカケ線があったとよく耳にする。俗に言う大物と呼ばれる人達だ。
現代でいうと、芸能人にマスカケ線を持っている人が大勢いる。
逆境に強く、自我が強く、どこででも、何をしてでも、のし上がり生き抜く力を与えるというマスカケ線。
未来を自分の手でつかむ、自分の意思を突き通す力がある、そんな風に云われている。
「ねえ、ユズ、マスカケ線って知ってる?」
「うん?」
人が生きていくうえで、パートナーを求めるのは、きっとパートナーに自分の足りないものを求めているからだと思う。そしてパートナーに足りないものを補うことに、幸せを感じるからだと思う。
「自分の未来を自分の手でつかむ手相なんだって」
ユズが私の右手に走るマスカケ線をなでた。
「杏奈は、自分で未来をつかめるのか。なんか納得だ」
みんなにしっかりしていると、一人でも大丈夫だと、そんなことを言われてしまう私には、パートナーなんてものは必要ないのかもしれない。
だけど本当は、そんなことない。
「うん。私がつかんだのが、ユズとの未来だよ」
私がしっかりしているのは本当のこと。
それでも、そんな私を甘やかしてくれる貴方に出会った。
「あんまり可愛いこと言うと、襲っちゃうぞ、俺の可愛いお姫様?」
「そんなこと言って、結局襲っちゃうくせに、私のナイト様?」
私にパートナーが必要ないだなんて、そんなことはない。
「ユズ、愛してる」
「杏奈のこと、離してやんない」
いつかこの人と、本当の意味での人生のパートナーになる日が来ると思う。
それは確かな未来として、視野に入れていいものだ。
そして、それが私のつかんだ未来なのだと信じたい。
ねえ、私の手のマスカケ線。
この幸せをもたらしてくれてありがとう。
これからも、頑固で意地っ張りな私だけど、私に力をちょうだいね。
この最愛の人との未来を、しっかりとつかめますように。
マスカケ線に願いを――……。