契約の婚約者
7.開花
沙希と片桐の社員食堂での公開キスシーンからバタバタと一週間が過ぎ、二人は何事もなかったように過ごしていた。


いや、社内ではかなり噂になり、平然と仕事をこなす二人とは対称的に周囲は大荒れだったが----


片桐は上司に呼び出され叱責をくらうが、あっさりと沙希を親公認の婚約者だと宣言してしまった為、噂は尾ひれがつき、二人は結婚秒読みとまで言われた。


そんな噂もどこ吹く風、片桐はあれから毎晩沙希のマンションを訪れ、朝まで一緒に時を過ごす。朝には一度自分のマンションには戻るが、ほぼ同棲しているようなものだった。


驚いたことに、そんな片桐の行動に沙希は反発するかと思ったが、彼女は至極自然にその状況を受け入れていた。


これと言って二人の関係に進展があったわけではないが、二人の間に漂う空気がどこか違った。


甘い言葉も親密な時間もあったわけではないが、二人で過ごす時間は、何年も一緒に過ごしてきた恋人同士のような自然さがあった。





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