アジアン・プリンス
(5)シャル・ウィ・ダンス?
メイソンは皇太子に謝罪し、ティナを叱りつけようとした。だが、皇太子はその隙を与えず、彼女をダンスに誘う。


「ミス・メイソン、私と、1曲踊っていただけませんか?」

「あ、私は……踊ったことがありませんし、それに、靴も……」


皇太子の横に彼女の靴は落ちていた。 


「ティナ! お前はなんという失礼な真似を……」


その黒ずくめの衣装だけでなく、馬鹿げた振る舞いまで皇太子に知られ、メイソンの怒りは頂点を越えている。

皇太子の面前でなければ、とうに手を上げていただろう。

挙げ句にダンスまで断わろうとする娘を、父は憤怒の形相で睨みつけた。


「なるほど。確かに裸足では踊れませんね」


そう言うと、皇太子はスッと膝を折り、転がった左右のシューズを揃えてティナの前に置いた。


「殿下! それは」


< 18 / 293 >

この作品をシェア

pagetop