アジアン・プリンス
(9)バングルの意味
直後、皇太子の瞳に緊張が走り、何かに怯えるようにティナの手を振り払った。


(なんという失礼な行動をとってしまったの……私はいったいどうしたというの?)


これまで、自分から男性に触れたことなど1度もない。とくに、あの事件以降、男性恐怖症ではないが、常に警戒心を持って対応している。 

それが、どうしたことか、皇太子相手にはまるでセンサーが反応しない。というより、8年間ティナの中に眠り続けた感情が、まるで目覚めたかのようだ。


「も、申し訳ありませんっ!」

「いや……」


言葉少ない皇太子の様子に、さらにティナは恐縮の度合いを深めた。


これが世間に慣れた女性なら……仮に、アンジーのような女子大生であっても、皇太子の瞳に走った、欲情を伴う閃光を見逃さなかっただろう。

しかし、ティナには気付くはずもなく。


レイ皇太子は2、3度深呼吸すると、照れたような笑顔を浮かべた。


「いや、そうではないのだ。海の青に称されるのは嬉しいが……これでも太平洋に浮かぶ国の王子なんだが」

「あ……」


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