ルージュはキスのあとで
とまどい姫の前にキラキラ王子現る!


5 とまどい姫の前にキラキラ王子現る!




「どこ行った!?」



 キョロキョロと辺りを見渡すが、そこには長谷部さんらしき姿は見えない。

 ええぃ、クソッ! 

 思わず汚い言葉を心で叫び、舌打ちして私は走り出した。



 まだ遠くには行っていないはずだ。

 今なら、まだ間に合う。

今なら長谷部さんをとっ捕まえて、説得してこんな企画やめさせることができるはずだ。
 
 息を荒らし、あちこち視線を配りながら走る。


 
「もう! どこ行ったのよ。長谷部さんったら」



 こんなモデル、絶対にムリ。っていうか、やりたくない。

 いくら彩乃が勧めたって、皆藤さんが頼み込んできたって絶対にやらない。

 私の脳裏から、長谷部さんのなんでも見透かしているような視線が離れない。

 
 はっきり言って、男は苦手なの。
 二人きりだなんて絶対にムリ。


 ずっと女ばかりの環境で育ってきた私に、あの長谷部さんとふたりきりで顔を付き合わせるだなんて至難の業だ。



 それもメイク講座だなんて。



 3ヶ月も、あの能面みたいに冷たい男とマンツーマンでメイクの勉強だなんてムリ。

 それも、その経過をファッション雑誌に載せていくというのだ。



 勘弁。マジ勘弁だってば!!



 こればっかりは彩乃が必死に私を説得したって首を縦になんて絶対に振らないんだから。

 皆藤さんに、頭を下げられたって絶対にやらないんだから。





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