ひとまわり、それ以上の恋
◆2、淡いときめき
 入社式の日、私はプライマリーの下着を身につけていた。
 ふんわり桃色のシフォン地にぼかしの花柄が細かにプリントされたブラ&ショーツセット。

 一見ロリっぽいのにセクシーさも兼ね揃えているそれは、女の子のやわらかマシュマロ肌をキレイに魅せてくれるので人気がある。

 ネット通販部門で男性が恋人に着て欲しい商品No1……『誘うブラシリーズ』のひとつ。

 あいにく誘う相手はいないけど……私にとってもお気に入りのひとつ。
 そしてこれは――入社試験のとき御守り代わりに着ていたものと同じだ。私を導いてくれたこのブラ&ショーツを今日はラッキーアイテムとして身につけている。

 入社式は明るめなグレイのスーツを選んだ。中には控えめなフリルの入ったピンクのブラウス、胸元にはコサージュをつけた。

 母から合格祝いにもらったエルメスのケリー。兄からのプレゼントしてもらったグッチの腕時計、それから自分でご褒美に買ったプラダのパンプス……。

 なんか人生賭けてますってぐらい、めちゃくちゃ気合い入っているんだけど、なんか七センチヒールって結構グラグラしちゃうし、さっきから緊張で震えてる。





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