冷めた指先で、火をつけて
*冷めた指先で、火をつけて*
「ねぇ」

 私の呼びかけに、彼は「ん?」と反応する。

「まだ終わんないの?」

「もうすぐ終わる」

「さっきもそう言ってたよ。でも全然終わらないね」

 言いながら、だんだん腹が立ってきた。近くに置いてあったバッグを勢いよく手に取り、立ち上がって彼の背中を睨む。

「もう帰る!」

 威勢よく言い放ってくるりと回れ右をし、玄関へ向かう。

「待てよ」

 ギシッと椅子の音がしたかと思うと、私は彼に後ろから抱きしめられていた。



「今来たばかりだろ。帰るなんて言うなよ」



 耳元で囁く甘い声にくらくらしながら、それでも今日は新しい服を着ているのに何も言ってくれないことを不満に思った。

「だってつまんないもん。遊びに来てもゲームばっかりしてて……」



 ゲームと私と、どっちが大事なの!?



 そう叫びたくなるのを唇を噛んでこらえた。
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