愛を教えて ―背徳の秘書―
(16)初めての拒絶
なぜ、雪音でなければならないんだろう。

そんな疑問が宗に頭に浮かんだ。


香織を愛せたら、それで済むことじゃないか、と。雪音は若い、宗との数ヶ月の付き合いなどすぐに忘れるはずだ。それに、万里子や卓巳もついている。きっと彼女に相応しい男を紹介して……。


そこまで考えたとき、ようやく宗の心に変化が現れた。


諦めるとか忘れるとか、衝動とは別の意味でコントロール不可能な場所に愛は存在するのだ。


「わ、るい……香織」


微妙に震えた宗の声だった。


「ユキ? どう……したの?」

「頼むよ……もう、頼むから勘弁してくれ」


目を固く閉じ、宗は今にも泣きそうだ。


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