恋のレシピの作り方
第二章 フレンチの神オーディン
  ―――休憩室に入ると、羽村が電卓を叩きながら伝票の整理をしていた。


「あ、春日さん、今月号のyummy読みましたか?」

 
 眼鏡のブリッジを人差し指でクイッと押し上げて、奈央に視線を向けた。


「いえ、まだなんです。今日の帰りにでも買っていこうかと思ってるんですが……」

「では、私が先ほど購入したものでよければどうぞ」
 

 月刊yummyはイチ押しのレストランの紹介や、注目のシェフなどのインタビューが載っているいわば料理雑誌だ。

 ちょこちょこと掲載されている、お手軽レシピコーナーが奈央はお気に入りだった。

 
「ありがとうございま―――あ!」

 表紙を見た瞬間、奈央は思わず声を小さくあげた。

 そこに載っていたのは―――。
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