真紅の世界
不思議な出逢いと救いの手

レティとの楽しい朝食の時間を終えてやってきたのは、この城にあるこの国で一番の書物庫だった。

今日は、レティがここで読みたい本があるらしくて、一緒に来てほしいと言われたのだ。

たどり着いた書物庫は、私が知っている図書館とは比べ物にならないくらい大きかった。高い天井まで伸びた本棚が所狭しと並んでいて、そこにびっしりと本が詰まっている。


あんなに高いところにある本をどうやってとるんだろう。
私がそんなことを思いながら上にある本を眺めていると、レティは目当ての本を見つけたらしい。書物庫の中央にある椅子に座って、すでに読み始めていて夢中になっているようだ。まだ文字の読めない私は、ああやって夢中になることもできないから、書物庫を探検することにした。


お城の中にあるとは思えない大きさのここは、今日一日ですべてのところを見て回れるのか不安になるほど大きい。


とにかく奥から攻めてみようと、ひたすらまっすぐ突き進んでみる。すると、一番奥であろう壁がやっと見えて来た。そこの床の近くに、まるで隠れているような小さな木の扉があった。
私の胸くらいまでの高さしかない扉。壁一面に本棚があるのに、そこだけ本棚が避けてできたかのような造りだ。
扉を開けたの向こうに、なにか不思議なことがありそうな予感がプンプンする。

ドキドキよりもわくわくしながらその扉に手をかける。

鍵がかかっているかもと思ったのに、意外にもすんなりと扉は開いた。


中に入るとそこは2畳くらいの何もない空間だった。

不思議なことに上を見上げても天井が見えなくて、ただ真っ暗な闇が広がっている。
電気と言えるものはないのに、視界は明るいから余計に不思議だ。

これも魔法でそういうふうに見えるのかな、とその部屋の真ん中で天井を見上げていると、


「ようこそ、サラ様」


誰もいなかったはずの空間から自分以外の声が聞こえて、慌てて視線を巡らせるもののやっぱり誰もいない。

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