彼と彼女と彼の事情
〈6〉彼の事情


「いらっしゃいませ!ようこそ」


白いシャツにギャルソンタイプの黒のエプロンを身に纏った細身の男性が営業用とはいえ、惜しみなくらいの笑顔をこちらに向け出迎えた。


あまりに端正な顔立ちで、少し腰が引けてしまったほど。


エントランスから高級感漂う雰囲気。


新鮮な食材が並べられた店内に足を踏み入れると、やはり場違いではないかと、ものすごく気後れした。 


テーブルに着席している人は皆、お洒落な人ばかり。 

誰一人として、カジュアルな服装をしている者はいない。


スーツとまではいかなくとも、男性ならジャケットにパンツ、女性ならワンピース、もしくはアンサンブルといった様相。 


とてもじゃないけど、この服装では恐れ多い。   


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