溺愛MOON
感じる体温
かぐやはそんな私をチラリと見たけれど、「ついて来るな」とは言わなかった。

私はそれがついて行ってもいい、ということだと判断して、本当にかぐやの居場所が分かるかもしれないことに興奮していた。


「俺、煮付けよりカレーの方が食いたかった」

「は!?」


かぐやは道路に上がると迷うことなく左方向に真っ直ぐに歩いて行った。

アスファルトには彼の歩いた後に点々と水滴の染みが続いて行く。


「煮付けはもうちょっと甘くない方が良い」

「……」


私は信じられない思いで目をしばたかせながら、彼の後をついて行く。


私がカレーを煮込んでたことを知ってる。

ネズミに上げた煮魚の味を知ってる。


てことは……。
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