溺愛MOON
壊れていく音
かぐやが怒っていることは私の目から見ても明白だった。


「かぐや。ねぇ、ちょっと待って」


話しかけても答えてもくれない。

掴まれた腕を強く引かれたまま、長屋の前まで引きずられるように歩いた。


そして私達の二つ並んだ部屋の扉の前まで連れて来られると、ぽいっと捨てるように放り出された。


そこまで来ると私はかぐやが怒っていることへの悲しみよりも、無視される苛立ちの方が自分の感情を支配していて、「何するのよ!」とキツい声を上げていた。


「怒ってるの?」


そう聞くかぐやの方がよっぽど怒っている。

無表情な色のない瞳で私のことを見ている。


まともに会話してくれる気はしないけれど、私はどうしても気になってドキドキする胸を押さえてかぐやに聞いた。


「ど……、どうして私があそこに居るって分かったの?」


勝手なことをして、私を連れ出して。

話しかけても無視するし。

稲垣さんと知り合いみたいなのに私には内緒にするし。


怒りたいことはたくさんあるはずだった
< 114 / 147 >

この作品をシェア

pagetop