花蓮【完結】
真実の後の彼の覚悟



「なつき」


「…寒い」


「そう、言うなって」


「さびーーーーよ!
何だよ、いきなり外連れ出したと思ったら海って!」


「……いいじゃんかよ~失恋したんだよ!」


「…珍しいな、お前が本気なのに落とせなかったの」


「本気になったの初めてだもん」


「あー…そうでした」


「麻美ちゃんの口癖真似するなあああ」


「知らねーよ!!」



俺は嫌がるなつきを無理矢理誘い出して、あの海に来ていた。


なつきは寒いを連呼して車に戻っていく。




俺は海を眺めながら。


右手に視線を落とす。
包帯が巻かれているそれ。





あの日。
俺が麻美ちゃんを守れた日。
< 164 / 368 >

この作品をシェア

pagetop