恋猫
四の章 地獄への化身

 淳ノ介と鈴の二人は、長い長い抱擁を終えた。
 鈴は、胸は高鳴り、頬は紅色に紅潮していた。


 「鈴は、また、淳ノ介さまにお会いしとうございます」


 鈴が淳ノ介の目の芯を見詰めて言った。


 「なら、いつでも私の屋敷に遊びに来ればいい」


 淳ノ介が涼やかな顔をして呟いた。


 「本当でございますか。嬉しい。なら、明日、お屋敷に遊びに行っても構いませんか」
 「ええ、構いませんよ」


 二人は、明日に会う約束をした。そして、二人並んで帰ると人目に付くので、別々に屋敷へと帰った。


 美化は二人の話を一言残さず盗み聞きしていた。そして、二人が別れ別れになると、鈴の後をずっと用心深くつけていた。





< 112 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop