想 sougetu 月
アメジスト
 朝起きてから下に降りると、おじさんとおばさんの姿はなく、テーブルには私の好物の料理ばかりが並んでいた。

 私の席の前には1万円札が3枚と、リボンのかかったプレゼントの箱が2つ。
 おじさんとおばさんからだ。

 それぞれにメッセージカードがついている。

 おじさんからはネックレス。
 おばさんからはイヤリングが入っていた。
 両方とも同じデザイン。

「かわいい♪」

 そっと箱に戻していると後ろで物音が聞こえ、振り返ってみれば斎だった。

「あ、斎。おはよう」
「ああ」

 まだ少しだけ不機嫌そうではあったけれど、もう怒ってる様子はないことにほっとする。
 誕生日まで斎と喧嘩をするのは嫌だ。

 斎がキッチンへ入って行くと、家の電話が鳴る。
 近くの子機を取って電話に出ると、受話器越しに嬉しい声が聞こえた。

 受話器の向こうから聞こえる母親の声。
 時差があるのに私が起きる時間に電話してきてくれたことが嬉しい。

『おはよう』
「うん、おはよう」
『お誕生日おめでとう。プレゼント贈ったから、今日そっちに届くはずよ』
「ありがとう。楽しみにしてる」

 一瞬だけキッチンから斎が顔を覗かせた。
 電話の相手が両親だとわかったみたいで、微かに微笑んだような気がする。
 
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