孤高の魚
歩太


僕が歩太と暮らす事になったのは、本当に偶然の始まりだった。


………


晴れてこっちの大学に進学を決めた僕は、この世代独特の家族への反抗心を武器に、単身で上京し、親からせしめた一人暮らしのための準備金を握り締め、一人、この街をさまよっていた。


けれども思っていたより、なかなかいい部屋は見つからない。

都内の家賃は僕の想像を遥かに超えた金額で、共同の風呂やトイレのついた安賃の下宿アパートは、どうも先輩達のコネが必要らしかった。


………


元々、デザイン科のあるこの大学を希望したのも僕の一方的な我が儘で、裕福ではない僕の家庭からは、何とか学費が絞り出るくらいで、それ以上の仕送りは期待できない。
少額でも奨学金と、高額のアルバイトが僕には必要に思えたし、生活費の殆どを占める家賃を抑えるのは、僕にはさらに必須だった。


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