マスカレードに誘われて
第三章 光と闇

執事曰く、


「一週間前の朝でした。ジェームズ様が、青い顔で今宵の事を教えて下さったのは」

廊下を歩きながら、一部屋づつ回ってみる。
しかし、イヴのいる気配はしなかった。

それどころか、先程のような悪夢は消え去っていった。
花瓶は元通りに机の上に置かれており、絵画の中の住人は時が止まったように動かない。

急に何も起きなくなってしまった。
その事が、ますますロイの不安を駆り立てた。

その中を歩く、二人。
彼等の靴が床を鳴らす。
その音がやけに響き渡った。

「どうして青い顔だったの?」

「それは、私にも分かりません。あまりにも急でしたので、質問する暇がありませんでした」

「……」

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