あおぞらカルテ
case07 92歳男性 心肺停止
朝の更衣室。

常に鍵を刺しっぱなしのロッカーを開けると、くたびれた白衣が揺れる。

最近はスクラブばっかり着ているせいで、白衣を着ることもない。

その白衣のポケットに手を突っ込むと、ようやく見つけた予備のボールペン。


「おはよー…道重、今日も早いなぁ」


同期の桑原があくびをしながらやってきて、オレの5つ右隣のロッカーをあけた。

桑原も今は救命の研修中。

将来は外科医をめざしてる。


「道重って何時に起きてんの?」

「ん、さっき。昨日は病院に泊ったから」

「…まじか!?」

「だってさぁ、昨日入ってきたイレウスの患者さん、やっぱり緊急オペになったから」


落ち着いてると思っていた患者さんだったけど、いやな予感がしたから居残った。

そしたら、やっぱり急変。


「なにその“やっぱり”って」

「なんとなく、そんな気がしたから」


指導医の田尾先生に唯一ほめられる。

患者さんの急変を見抜く、第六感。
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