やわらかな夜
5―“それ”を言った日
俺とあかりは焼き肉を食べるだけ食べて、お酒を飲むだけ飲んだ。

けど、あかりの無理してる雰囲気は変わらなかった。


風呂から出ると、俺は冷蔵庫からスポーツドリンクを出した。

あかりに視線を向けると、テレビを見ていた。

それを見て寝室に向かおうとした俺を、
「――シュージ…」

うっかりしたら聞き逃してしまいそうなくらいの小さな声で、あかりが俺の名前を呼んだ。

「どうした?」

あかりが俺に歩み寄ってきたのがわかった。

「――あかり?」

後ろからあかりの手が伸びてきたと思ったら、大切なものを扱うように俺を抱きしめてきた。
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