シークレット ハニー~101号室の恋事情~
◇仮初めの恋



「え……五十嵐って、“dearness”の?!」
「福島さんっ、声!」


会社の電話から福島さんが予約したのは、帰宅途中にある創作料理店。
テーブル席のみだけど、隣の席との間にある壁が天井まであるから、個室みたいな雰囲気で話せる。

照明も抑え気味だし、おしゃれでメニューも豊富だから、福島さんお気に入りのお店だ。

声の大きさを指摘された福島さんが、ごめんごめんとハっとした顔をする。
それから周りを見渡して、ボリュームを抑えた声で聞く。


「それ、本当なの? “dearness”って結構人気のバンドだよ」
「ディアー……?」
「ディア―ネス。人気だよ。五十嵐さんが抜けた後、違うギターが入ったけど変わらず人気バンドだし。
テレビにはあまり出ないけど、CDとかランキング入ってるでしょ……って、テレビも音楽も興味ない雨宮に言っても無駄か」


はぁってため息をついた福島さんに、すみませんって苦笑いする。



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