For 10 years
諦め
.



いつのまにか……


冬、春、夏と季節は移り変わっていったのに……


俺の心はいまだに絢華ちゃんでいっぱいだった。



夏休みに入ると、絢華ちゃんは親友の紗羽ちゃんと一緒に、このファミレスへよく食事をしに来るようになった。


一度だけ、俺の仕事終わりと絢華ちゃん達が帰るのとが、一緒になった時があった。


ダメ元で……



「送っていこうか?」



と言うと、紗羽ちゃんが上機嫌に



「送って下さーい!」



と言ったけれど……


明らかに困った顔をした絢華ちゃん。


きっと、彼氏以外の車には乗りたくないって思ってるんだろうな。


絢華ちゃんはそういう子だ。


実はそういう絢華ちゃんも、俺は好きだったりする。


でもあえて、それには気付かないふりをして、二人を乗せて絢華ちゃん家へ向かった。
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