恋萌え~クールな彼に愛されて~
第六章 ~拾った猫~

転がるように塚本の部屋を出た梨花は
エレベーターを呼ぶボタンを叩きつけるように何度も押した。
先に出て行った彼女が降りたままのエレベーターは
グランドフロアに留まったままだったのだろう。なかなか上がってこない。
苛立たしくその緩慢な動きを待つ間、色々な思いが梨花の脳裏を巡る。


塚本や彼女に対する悔しさと妬ましさと腹立たしさと落胆。
そして何よりも たった今、塚本の部屋を飛び出してきた事を
もう後悔して酷く落ち込んだ。
同じ悔やむのなら、彼女が何者なのかを
聞いてからでもよかったのではないだろうか…と更に後悔はつのる。
昔はどうであれ、今は本当に何もない友達関係なのだとしたら…と
後悔の段重ねが高く積みあがっていく。


もう一度塚本のところへ戻ってやり直したくても
積み重なった後悔の重みで身動きがとれない。
動けないどころか、せっかく芽吹いた恋までもが
押し潰されてしまいそうだった。


「やだ。 もう……」


そんな自分に嫌気が差した梨花が額をエレベーターのドアに打ち付けた時
ゆっくりと扉が開き始めた。
身体を捻じ込むようにして中に入った梨花が
ボタンのパネルに手を伸ばそうとした時だった。



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