SトロベリージャM
現われたSトロベリー
エディク社の入口へとたどり着いた。


自動ドアが開き、先へと進むと受付があった。


そこには、受付嬢がいた。


大手企業の看板となるだけに、端正な顔立ちに、1ミリのズレも1粒の毛穴も許されないようなメイクが施されていた。


まるで、ファンデーションで皮膚を埋め立てしたかのようだ。


そして、プルプルテカテカの赤い唇は、生肉をほおばって、舌舐めずりをした後のようにも見えた。


実野里が、カツカツと慣れないヒールを鳴らしながら近づいていくと「いらっしゃいませ。」と声をかけてきた。


今風の洒落た発音だ。


(よし!田舎のイントネーション、抹消タイム開始!)


「面接に来ました、梶矢谷実野里と申します。」


「お待ちしておりました。エレベーターに乗って、12階で降りると社長室があります。そこが、面接会場です。」


「分かりました。ご丁寧にありがとうございます。」


ヒールが気になったが、なんとか堂々とした面持ちでエレベーターまでたどり着いた。


(もう!カッコつけないで、パンプスにしとけばよかった!ヒールなんてちょん切ってやりたい!)


微妙な苛立ちを胸に、12階のボタンを押した。

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