一緒に暮らそう
会えない時間

 その日、紗恵は意を決して神戸の町へ赴いた。

 手にスーパーのレジ袋を提げている。卵がゆの材料やフルーツを買い込んできたのだ。
 来るなとは言われているが、そう言われると新多の様態が気になって仕方がない。彼女は連絡もせずに、いきなり彼のマンションを訪れることにした。来たら来たで、会って話をしてくれるだろう。

 マンションに着くと、タワーマンションのエントランスにカードキーを差し込んだ。彼女は合鍵をもらっているのだ。
 自動ドアが開き、彼女はエレベーターで階上の部屋へ向かう。彼はどんな様子だろうかと考えている。

 エレベーターのドアが開き、彼女は廊下に出た。
 彼の部屋の前まで行き、呼び鈴を鳴らす。インタホンは応答しなかった。

 しばらくしてドアが開く。
 出てきた人物を見て紗恵は驚いた。
 それは先日、ランチの席に押しかけてきた古屋翔子だった。
 今日も実にいい身なりをしている。身に着けているトレゾワの香りが鼻を突いてくる。
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