ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
chapter 1

 クリスマスの早朝。

 ローズは声にならない叫びと共に目を覚ました。少し汗ばみひどく喉が渇いている。

 そっとベッドから起き上がると、傍らのろうそくに火をつけ、水差しの水を口に含んだ。

 ひんやりした感触が喉に染みる。少し腫れているようだ。

「風邪かしら、いやだわ」

 壁の小さな鏡に、寝乱れた自分姿が映っていた。

 やや小さめの卵形の顔に、大きな表情豊かな茶色の目とすっきり通った鼻、そして優美な弧を描いた眉。唇はふっくらとして、バラのつぼみを思わせる。

 だがその顔には今、疲労が濃く浮かんでいた。肩の下で切りそろえた自慢の金髪もあちこちはねている。夕べ、水浴後すぐ眠ってしまったせいだ。

 なんて違うのかしら……。去年とは。

 でも、これが、平凡なわたしにはふさわしい環境よね。


 彼女はろうそくの光に照らされた自室を見渡し、ふっと呟いた。

 村の安下宿の小部屋には、洗いざらしのキルトをかけた狭い寝台の傍に、身の回りのものを入れるチェストと小さな椅子、テーブルが一組あるだけ。

 幾何学模様の壁紙はすすけ、暖を取る足元の古い小型ストーブも薪が切れていた。

 この寂しい環境が、十九歳になったローズマリーのすべてだ。

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