僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
─Ⅵ─ Salvia


ポケットに入れていた携帯がブルブルッと震える。

取り出してみると、最近アドレスを交換した三浦さんからメールが届いたところだった。


『マイ原付ゲットしました』


たくさんの可愛い絵文字と一緒に送られてきたのはその一文と、1枚の写メ。

深いグリーンの色をしたスクーターが写っている。


三浦さんが原付の免許を取ったのは先週のことだ。

テスト週間最終日で、午前中で学校が終わった後に取りに行ってきたらしい。

おかげで免許取得のための勉強しかしなかったから、学校のほうのテストは笑えない結果だったと笑いながら言っていた。


わたしは立ち止まって、すぐ脇にあったお店のショーウィンドウの隅にもたれながら返事を打つ。


『その色にしたんだね。三浦さんに合ってると思う』


三浦さんと違って絵文字を上手く使いこなせないわたしのメールはなんとも素っ気ない。

どうにか最後に笑顔マークとバイクの絵を付けて、送信ボタンをポンと押した。

それからもう一度、三浦さんからのメールを開いて写真を見てみる。


免許を取る前から、ふたりで相談しながら決めた車種。

使い勝手がいいスクータータイプ、それから何よりオシャレさを重視してこれを選んだ。

だけど最後まで悩んでいたのが車体のカラー。

気に入ったのはレッド、アイボリー、グリーンの3色で、それから三浦さんはたったひとつをなかなか決められずにいた。


そして彼女が選んだのは、わたしも同じくこれが一番だと思った色。

パッと見た印象では、鮮やかな赤や優しいアイボリーのほうが彼女には合ってるようにも見えた。

だけど、明るいだけじゃない三浦さんの人柄の朗らかさには、やっぱりこれが、一番似合う。

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