「同じ空の下で…」
第2章 決断
第2章  決断





私の中で、亮太の存在がどんどん薄くなっていく…────


あの日、出ていって以来亮太からの連絡はなかった。

あれから1週間経つ。

アパートに帰ってきてる形跡はあるのだが、私に会わないように帰ってきてるのか姿を見る事は無かった。

無論、同じ会社だから後ろ姿を見かけた事はある。

だけど、働いてる階も違うし、敢えて会いにいかなければ顔をあわせる事はない。



しかしながら…もともとここは亮太のアパートだ…。
今まさにこれから別れようとしている相手名義のアパートに、いつまでも、一人で生活する訳にもいかない…。

少しずつだけど、不動産情報などを見ては、自分の城に相応しい所を探した。
貯金や財形貯蓄をすべて解約して、なんとか引っ越しはできそうだった。
本当はもう少し貯まってから出て行きたかったけど…そんな気持ち的な余裕すら今はなかった。

きっと今がチャンスだ。絶好のタイミングだと思う。



会社の帰り道にある不動産屋から何枚か物件情報を受け取り、アパートに帰る途中の帰路でだった。

「艶香」

そう呼ばれた気がして、後ろを振り向くと、そこには亮太が居た。
街頭に照らされ、亮太は不気味に青白く見えて身震いをした。

「亮太…ひさしぶり…」

「今日は…帰っていいか?」

「何いってんの?…あそこは亮太のアパートじゃない。」

「ちゃんと、話、できるか?」

「…私も、ちゃんと話をしておかないとって思ってたし」

1週間ぶりに見る亮太だったけど、久々に会えて嬉しいとか、会いたかった~…とか全く感じない自分が居て、亮太への気持ちが完全に冷めているんだなぁって、その時、改めて実感していた。



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