薇姫/獣帝
崩壊へのカウントダウン



棗side




華の様に綺麗な女、琉稀は後部座席で静かに目を瞑って眉間にシワを寄せている。




「……」




話しかける隙も無い程緊迫した空気を纏っている琉稀の目の下にはクマが薄らと浮かんでいた。





チラチラとバックミラーで確認するけど、そんな行為で集中力を切らす様な奴じゃない。





そう解っているけど、何もしないよりは賭けに出たほうが懸命だろ?




そんな妨害じみたイヤがらせに琉稀は何も反応せずに拳を強く握りしめたままだった。







運転を怠る様な事はしないけど、流石に気にしすぎか……




溜息を吐いて信号の間にペチペチと頬を叩いた。





静かに着いた藍城の門の前には報告をしてないからか組員のお出迎えはない。





まぁ、今回はなかった方がいいかもしれない。





俺だって急にメールで「家」とだけ送られて来てマンションに行くとスーツの琉稀が立ってるんだからな。





ドアを乱雑に開け放ってズカズカと屋敷へと足を踏み込んでいく琉稀。








……どうしちまったんだ?







怜央の来るまでの琉稀に戻ったみてぇだ。




頑張ろうとして頑張って頑張って……そんな事を積み重ね様と必死なあの頃の琉稀。








見ているこっちが吐きそうな日々を過ごしていた。





なのに、













まだ、頑張るのか?












琉稀の後を小走りでつくと、こっちを見ずに低い声で唸った。




『来るな』






その声の冷さに思わず足が止まった。






『誰も入れるな、盗み聞きなどしたら例えお前等でも容赦しないぞ』




奥座のところに行く寸前で俺を振り向いてくれた。






だけど、






大きくて銀と赤の瞳は









暗く濁っていた。











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