あの加藤とあの課長
あの加藤とあの課長

あの課長

髪を撫でられる感覚に目を覚ますと、愛おしそうに目を細める彼がいた。



「悪い、起こしたか?」

「今何時…。」

「5時。」



肌寒さに彼の方へと擦り寄ると、冷えた私の体を抱きすくめる。

起きなきゃとは思うものの、この温かさに目を開くことすら億劫になる。



「疲れてんのにごめんな。」



それが昨晩のことを指しているんだとすぐに気付いた。

申し訳なさそうに謝る彼…風間 直人(かざま なおと)とは、この間付き合って1年を迎えたばかりだ。



「…直人の馬鹿…。」

「やっぱ大変なのか?」

「うん…。」



平社員から係長に昇進して早半年、慣れたものの疲れはするし、やっぱり大変だ。



「にしてもすげえよな、まだ24歳で係長とか。俺27歳なのに。」

「頑張ったから…。」



直人と私は年は違うけれど同期だ。短大出の私に対して4年制大学出身の直人。


ちなみに私が3月で早生まれで、直人が4月生まれだから3歳差。

学年で言うと、2学年上だ。


こんなのは日常茶飯事で、基本私の同期は皆2学年上だ。


短大出の私でも係長にまでなれたのは、うちの会社が実力主義であるおかげだ。



「っつか陽萌(ひめ)モテすぎ。俺の部署でもすごいんだけど。」



と拗ねた表情をする直人。

そんなこと言われても。私はモテてると思わないし、第一勝手に好かれるだけなのに。
< 1 / 474 >

この作品をシェア

pagetop