社内恋愛のススメ
『上司の彼』



日曜日の夜。

私の至福の時間を邪魔してくれたのは、隣のデスクの長友くん。


入社以来、同じ部署で机を並べて仕事をしてきた彼。

同僚である長友くんは、見事に私の時間を潰してくれた。



酔っ払いを制裁した私は、長友くんをコンビニの駐車場に捨ててきた。


多分、自力で帰るだろう。

うん。

か弱い女の子じゃないから、送ってあげる必要性も感じない。



帰って来た私を待ち受けていたのは、すっかり温くなってしまった缶ビール。


温くなってしまっただけではない。

炭酸まで抜けている。


あぁ、あのシュワシュワ感はどこに行ってしまったのだろう。



「まず!」


一口だけ口にしたけれど、すぐに捨ててしまった。


もったいない。

でも、仕方ない。


温くなったビールほど、飲めないものはない。



あーあ、残念。

本当に残念。


これもみんな、長友くんのせい。

酔っ払いの電話に呼び出されてしまった、そんな自分を呪う。



焼酎やチューハイなら、氷を入れればまだ飲む気にもなれるけど。

ビールだけは、氷を入れても美味しさは復活してくれない。


苦いだけの水になってしまう。


飲むことを諦めた私は、シャワーだけを浴びてからベッドの中に潜り込んだ。





翌日の朝。


少量のビールなんかじゃ、二日酔いにもならない。

アルコールなんて、昨日のうちに抜けてしまっている。



「んーーー!」


ベッドに横たわったまま、大きく体を伸ばす私。



今日は、月曜日。


新しい週の始まり。

1週間の始まりの日。



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