キスマーク
彼とサヨナラ





『―…やっと出てくれたね』



受話器越しに聞こえるヒロの声は低く、どこか寂しげ。



『帰り着いたの?』


「帰ったけど―…何の用?」



用があるならそれだけさっさと伝えて、と、嫌味な溜め息を交えて言う。


と、



『さっきの男ともう“したの”?』



なんて、直球な問い。



話をしたいって……結局そんな事を確かめるために?



私が誰としたってヒロには関係ないじゃない。ヒロがどの女としようが私には関係ない事と同じ。


それとも単なる好奇心?



「そんな事、ヒロに答える筋合いなんてないわ」



好奇心だけなら放っておいてよ、と、ヒロを突き放す。




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