温め直したら、甘くなりました
初めてのお風呂

いつも通りの時間に片づけを終えて着替えると、私は裏口から店を出た。

もうすぐ五月。夜の寒さも最近は和らいだな……そんなことを考えながら集の待つ家へ早足で歩く。


昼間、あんな恥ずかしい場面を自分をよく知る幼なじみに見られたことは耐えがたい仕打ちだった。

――――でも。

二人きりの場所でなら、もっと集と触れ合いたいと思う。

あんなに変な人なのに、気がつくと彼の面影は心いっぱいに広がっていて、逢いたいと願う気持ちに変わる。

それに気づいた私の足は、もはや小走りに変わっていた。


息を切らせてマンションを見上げ、自分たちの部屋に明かりがついているのを確認すると、安堵の気持ちで胸が満たされて……
集が待っているのを、嬉しいと思う自分が居る。


今日は、一緒にお風呂に入ってあげてもいいかな。


そこまで思えるようになった自分に驚きつつ、私は彼の待つ家へと機嫌よく帰った。



「――だから、未遂で終わったからよかったようなものの、あんな女だと解っていたら最初から会わなかった。どうしてくれるんだ安西」



リビングの扉をそっと開けると、どうやら集は電話中のようだった。

相手は安西さんみたいだから、仕事の話なんだろうけど……“あんな女”という単語が気になった。


私は集がこちらに気付いてないのを言いことに、扉を少し開けたままで聞き耳を立てた。

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