夜香花
第四章
 それから数日後。
 里の広場で、今回の報酬を分け終えた後、乱破たちは皆で火を囲みながら、談笑していた。
 
 真砂は一応皆の中心で、注がれる酒を飲んでいた。

「真砂様~」

 千代が先程から、真砂にしなだれかかっている。
 褒美を貰えることが、よほど嬉しいらしい。
 全く相手にされていなくても、気づかぬ風に、真砂にべったりと張り付いている。

 やがておのおの、ねぐらに消える頃、真砂も立ち上がった。
 別に何も言わずにねぐらへと向かうが、その後ろを千代がいそいそとついてくる。

「あら真砂様。お怪我されたんですか?」

 家に入り、真砂が腰を下ろすなり、早速帯に手をかけていた千代が、真砂の腕を見て言った。
 浅く裂いただけだし、すでに数日が経っているため、もう赤い線になっているが、あの少女に付けられた傷だ。

「あの折りですか? すぐにわたくしを召してくだされば、お手当てしましたのに」

 己の胸元をはだけ、真砂の着物を広げながら、千代は傷に唇を寄せた。
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