溢れる蜜に溶けて

喉を潤す水っぽい匂いが部屋に漂った。



ーー遙くん、遙くん。

その綺麗な横顔に視線を巡らせ、心の中で声にできない名を何度も愛しく呼んだ。



「あ…っ、あの」



切れ長の瞳が、ぐるりと私を捉えただけで、胸がひとつ跳ねて。



「私が遙くんのこと、えっと…。すきって言ったらどう思いますか?」



強く握った拳とは裏腹に、弱々しい想いと、掠れた声が、ひくりと鳴った。


目の前の遙くんが、一人分空いた距離が焦らすように、指を伸ばす。



「はぁ?お前何言ってんの?」



熱気に孕んだ夜風が網戸から吹き込み、ミルクティー色の髪が揺れる。


結んだ薄い唇が開いただけで、涙が一粒溢れた。
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