不器用上司のアメとムチ
2.失恋は突然に

「長期在庫の棚卸し行くぞ」


久我さんに言われて午後一番にやってきたのは、管理課のある建物から外に出て、少し歩いたところにある大きな緑色のテント。

このテントを境に向こう側は製品を作る工場の敷地になっているけれど、あたしは一度も足を踏み入れたことはない。


梅雨は明けたというのに暗くジメっとしたテントに入ると、久我さんが入り口付近のスイッチで電気を点けた。



「ここは……?」

「資材置き場だ。基本的にここにあるのはもう使わない包材なんだが……それを全部数えて欲しい」


げ……と言いそうになったのを、直前で飲み込む。

メロンパンの分、頑張って働かなくちゃだもん。

でもこの見渡す限りの段ボールの山を見つめていると……正直、目眩がする。



「お前、まさかと思うが掛け算くらいはできるよな?」

「……ひと桁なら」

「あー……まあ充分だ。見れば解ると思うが、段ボールは中身の種類によっていくつかの塊に分けられてる。だいたい8×6で積んであるが、よく見ると一箱抜けてたり、適当な積み方してる奴もいるから注意深く見ろ。
それが終わるまで、管理には帰って来るな」

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