竜王様のお約束
ハチ
真っ白に磨きこまれた長い廊下を、すたすたとコクリュウは進んでいた。


未だ赤い頬は熱を帯び、早鐘を打つように鼓動は高鳴る。


脳裏から離れないヤヨイの笑顔がコクリュウを悩ませて、廊下で自分を待っていたコウリュウとすれ違った事にも、声を掛けられた事にも、気づかない程であった。


「おい!コクリュウ!」


小走りにコクリュウを追いかけて、3度目の呼びかけで肩を掴み、足止めすることに成功したコウリュウは、怪訝な顔をした。


「どうしたコクリュウ。
気づかないにも、程があるだろう・・・。
兄上に無理難題でも、言われたのか?」


コウリュウに肩を掴まれて呼びとめられた事に、とても驚いたコクリュウは、咄嗟に会釈をすることすら忘れる始末である。


「あっ・・・。
これはコウリュウ様。
こんな所でお会いするとは。
いかがなさいましたか?」


「いかがなさいましたって・・・。
お前を待っていたんだよ。
それより、顔が赤いようだが・・・大丈夫か?
何があった?」
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