とある神官の話
5 忘れられぬ過去と今
久しぶりだ、と私は思った。
「おー、お疲れさん」
「ロマノフ局長」
何故か「フィンデル神官が帰ってきた!」と騒がれた。それを相変わらず怠そうに片手をあげてそういったヘーニル・ロマノフに私は頷く。
やっと帰ってきたのだ。ああ長かった。聖都は祭日が過ぎ、もう年末年始に向けて動いている。あの装飾の類も変わって、ちょっと寂しく思った「大変だったな」
「あのハイネンに気に入られた時点で、苦労を察する」
「は、はぁ……」
―――よかった。
ヒューズ副局長が亡くなってから、ロマノフ局長は冷静さに欠けた時もあったのだが。今はそれでも落ち着いたようで「無事でなにより」と笑った。
エドガー・ジャンネスが副局長代理となり、落ち着いているのだろう。だが、まだちくりちくりと痛む。でも前に進むしかないのだ。
ノーリッシュブルグかあ、と漏らす局長の声を聞きながら、預かってきた書類を渡す。
「ま、またゆっくりしとけ」