ハッピーエンド
田中の場合
「それじゃこれ。6ヶ月継続でお願いね」

「有難うございます」

栄子から差し出された証書を田中は頭を下げて受け取った。

(6ヶ月かよ・・・畜生、上手い事ずらしてやがる)

勿論声には出さないし満面の笑みのままである。栄子の機嫌を損ねる事は田中の仕事にとって大ダメージ・・・いや、仕事の事を心配していたのは前までで、今となっては田中の人生そのものがかかっていると言っても過言ではない。

30を過ぎたばかりの田中俊和が市内の銀行において異例の速さで課長になったのは栄子のおかげだ。それは田中も否定しない。

パチンコ店やクラブの類をいくつも所有している栄子は10数年前に夫に先立たれてからは、その手に余るほどの資産で優雅に暮らしてきた。
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