スナック富士子【第四話】
第一話 「終わらない初恋」 

「ダ…メ…だって・・・」
声にならない声で俺がいうと、彼は「駄目なわけがない」と言った。それから小さな“ん” が付くような声を発して喘いだ。彼のその声はまるで生き物のようだ。その生き物が俺の背中の低い位置をぐいっと押す。頭の中では「だめだ、だめだ」と言うのに、俺のカラダはぜんぜん別のことを考えていて、俺のソレは彼の中でまた大きくなった。彼は多分それを知っていてそんな声を発するのではないかと思う。

「ダ・・・メ、だって」
と俺はもう一度言った。ダメなわけがない、じゃない?彼は絶え絶えに言う。
「なん、で?」
「ダメな、ら、」
---- 僕が一人でシてる部屋に入って来る訳がないから。



* * *


「はあ…?信じられない。それで?まだ続いてるの?」
「うん。」
「なんで?兄貴の方とつきあってるんでしょ?」
「うん。でも、もともとは弟の方が好きだったんだもん。」
「じゃあ、何で兄貴の方と付き合ったんだよ?」
「だから、言ってんじゃない?弟に冷たくされたんだよ。他の男とイチャイチャしてるとこ見たこともあったし。」
「それで諦めて兄貴にしたんでしょ?」
「うん」
「じゃ、なんで弟とそんなことになってんだよ」
「だから…」
「間違いは間違いだって思ってるんならもうやめなよ…」
「うん…でもさ、イイんだよ。あいつ。すっごく」

僕はわざと大きな溜息をついた。「バカ?」と問う気持ちをその溜息に籠めた。


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