The side of Paradise ”最後に奪う者”
8.恋わずらい

  *

どれが本当の彼女なんだろう。

そればかり、この一月の間、考えていた。

電話の声を聞いただけではなんでもなかったのに、調印で会ってからと言うもの、関心が向きっぱなしだった。

これはいわゆる一目ぼれなんだろうか。

記憶が無いだけで、結婚までしていたんだから、一目ぼれと言わないか。

じゃあ、なんだろう。

机の上には契約書が置いてあった。

デスクに肘をつき顎を支えてぼんやりと見ていた。

ペンを何度も転がす。

優美なサインだった。

それだけ見ればどんな淑女かと思う。

ビジネスの時と、成介と話していた時と、庭で見た時と。

以前の自分だったら知っているはず。

そして、自分と夫婦の時間を過ごしている時は?

涼は目を閉じた。
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