毒舌に惑わされて
危険近づく時
なぜか聖也もここで降りていて、私の背後に立っている。


「おい、早く開けろよ。おせーな」


「だ、だって、ちょっと待ってよ」


部屋の前で必死にバッグを漁るが、まだ酔いが回っているから簡単に見つけることが出来ない。

早く部屋に入りたいというのに。


「ったく、のろまだな。貸せよ」   


私からバッグを取り上げて、「これだろ?」数秒で鍵を探し出した。

っていうか、探していないな。すぐに出てきた。


「聖也ったら、何でそんなにあたしのバッグの中に詳しいのよ?」


聖也が鍵を開けて、この部屋の主である私よりも先に入り込んだ。

まだ歩き方のおかしい私は玄関に座り込んで、ゆっくりとパンプスを脱ぐ。しかし、また力が抜けてしまって立てなくなり、這うようにして部屋に向かった。


「何だよ、そのみっともない格好。恥ずかしいヤツだな」


確かに恥ずかしい格好だよ…。でも、立てないんだもん。


「もう、聖也はいいから、帰りなよ」


「ったく…どこまでも世話の焼けるヤツだな。ほら」


ええっ?

またもや、これはお姫さま抱っこだ!


「イヤ!下ろして~」

< 58 / 172 >

この作品をシェア

pagetop