上司のヒミツと私のウソ
第1部

第1章 悪夢のバレンタイン Valentine's Day of the opening




 子供のころからバレンタインデーが嫌いだった。


 なぜ憎らしい男の子になんかチョコレートをプレゼントしなければならないのか、なぜ二月十四日なのか、恋心とは無縁の子供だった私は、何度「バレンタインだから」と説明されても納得がいかなかった。


 あれは忘れもしない、小学校二年生のときだ。


 学校から帰ってまっさきに冷蔵庫を開けると、赤い包装紙と金のリボンでラッピングされた箱が入っていた。

 その瞬間、私はうれしさのあまりとんでもない勘違いをした。母が私のために用意したプレゼントだとおもいこんでしまったのだ。


 私はすぐに包装紙を破いて箱を開けてみた。ハート型や星型をしたチョコレートが全部で六個、きれいに並んで入っていた。

 私はがまんできずに一粒口の中にほうりこんだ。そしたら止まらなくなって、結局、全部食べてしまった。
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