例えばここに君がいて
2.見つけたのは俺のこと?
真新しい制服には独特の匂いがある。
高校の制服は、紺地のブレザーに薄紫のネクタイ、そしてグレーのチェック地のスラックスだ。
柄にもなくかしこまって鏡の前でチェックをする。
俺の髪は天然パーマで少し伸びるとすぐくしゃくしゃにうねってくる。だから中学の時は坊主だった。一応校則でもあったし。
伸ばし始めたのは2月からだ。母さんは3月末に切らせようとしたが、なんとか押し切ってここまで伸びた。しかし、伸びたら伸びたで髪は言うことを聞かないもんだ。
父さんの整髪剤ってのを拝借してみようかとも思ったが、おっさん臭くて余計ダメだ。
鏡の前で悪戦苦闘すること五分。飽きてきた俺は癖をそのまま活かすことにした。面倒くさいから投げ出したともいう。
「まあいいや。これで」
「サトル、準備出来た?」
「うん。もう行く」
玄関前で胸を逸らして深呼吸。
なんだろう、俺、すげー緊張してる。
今日からサユちゃんと同じ学校。
同じ空気を吸うのかって思ってドギマギするのはあまりにも変態臭い。
心の声を誰かに聞かれるわけでも無いのに、辺りをキョロキョロ見回した。
校門をくぐるとき、同じ中学で陸上部で一緒だった能崎颯(のうざき はやて)と出くわした。
「はよー。サトル」
「颯、おっす」