ベリーの魔法
Magique d'une fraise

森の側に佇む、小さな家。
家の中は昼だというのに薄暗く、パチパチと火が爆ぜる大きな暖炉の明りで部屋全体がオレンジ色を帯びている。

その部屋の中には若い娘が二人いて、一人は大きな鍋をかきまわし、もう一人は部屋の隅に座って本を広げている。

ここは魔女の家だ。
この国には魔女や魔法使いが多く存在していて、人々は病にかかるとまずは彼らのもとへと訪れて薬を調合してもらうのが普通だ。

コレットもその一人で、魔女のメリッサに薬を頼みに来たのだ。
二人は親友でもあり、メリッサはコレットのために最上の薬をつくろうと励んでいる。

メリッサは片手で鍋をかき混ぜながら近くの棚から籠をとって、中を覗きこんだ。

「ああ、もう。ミントの葉を切らしてた。コレット、悪いけどミントをとってきてくれない? くれぐれも他の植物には触れないように」

「わかったわ」

コレットは頷いて、メリッサから籠を受け取った。外へ出ようとドアに手をかけたコレットに、メリッサが念を押す。

「いい? 他のものには、絶対触らないのよ」

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