人知れず、夜泣き。
零れる。






 「ねぇ、もう一緒にお弁当食べるのやめよう」

 昼休みの屋上で、木内が眉間に皺を寄せながら弁当を手渡してきた。

 「なんで??」

 木内から弁当を受け取り、蓋を開けると、約束通りのえびフライWITHタルタルソースがいた。 間違いのない黄金コンビ。

 「橘くんって、ワタシの事狙ってるの??」

 困り顔で訪ねてくる木内は、何を勘違いしているのだろう。

 オレ、腹減ってる時にくそつまんない事言うヤツ、超絶嫌いなんですけど。

 「勘弁してよ」

 目の前に美味そうなえびさんがいると言うのに、木内など相手にしてられん。

 えびフライにタルタルを付けて、口の中へ。

 うーまーいー。 今日の木内はウザイけど、料理は相変わらず天才。
 
 「だよね。 ワタシも橘くんを狙った事なんか1度もないし、結構失恋引きずるタイプだし」

 料理の腕は天才だけど、やっぱり何が言いたいのか分からない木内はウザイ。

 しかもその、『オレの事は眼中にない』的な言い方がムカつく。

 せっかくひとがえびフライの感動に浸ってるというのによー。

 「だいたい社内の人となんて付き合う勇気ないもん。 振られた後、とても一緒には働けない。 気まずいし、みんなに噂されるだろうし」
 
 木内の意味不明な話は続く。

 てか、何振られる事前提で話してんの?? コイツ。

 そもそも何の話だよ。
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