金色・銀色王子さま
【2nd room】寂しいならいつでもおいで?
こうしてなんだかんだ、念願の一人暮らしが始まった。


2階に住んでいるのは私と、アンコウちゃんと呼び捨てた201号室の金髪男・片桐龍之介。
毎日違う女の子を部屋に招いている203号室の不破カイト。
不破の方が1つ上だがほぼ3人とも同い年。
比較的格好いい外見だから目立つのか、しっかりと他の階の住人に知られていた。
必然的に、その真ん中の部屋に越してきた私の事も…。
そう、朝ゴミ出しの時に上階の噂好きそうなおばさんから色々話を聞いた。


おかげで職場にはギリギリ到着。
息の荒さを整えながら、ネイリストの制服・黒エプロンにマスク、そして腰まで伸びた髪を1つに束ねた。
今日も美を求めたお客様をお迎えする。
しかし、朝イチのお客様の名前を見て途端に力が抜けた。



「やほ~麻衣~」
そう言ってお店に入ってきたのは、友達の香織だった。受付嬢、ボブヘアが良く似合うサバサバした子だ。

「なんだ香織か~。お店にわざわざかけなくても直接連絡くれればよかったのに」

「引っ越しの片付けで忙しいかな~と思って。どうよ?念願の一人暮らしは」


そう言いながらお客様のイスに腰かけた。
自分も香織の向かいに座り、手元にライトを照らす。
受付の仕事をする香織はネイルデザインは基本ピンク。シンプルでおさえなきゃいけないけど最近物足りないのかサンプルを見てよく悩む。

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