やくたたずの恋
10.彼女は、春の色。(後編)
 可愛い。可愛いじゃないか。
 小柄な体を軽快に動かし、パーティー会場をちょこまかと動き回る。そんな子犬のような雛子の姿を見て、敦也は思わず顔を綻ばせる。
 彼女のこの様子を見たら、ショパンだって『子犬のワルツ』ではなく、『雛子のワルツ』を作曲するかも知れない、などと想像しながら。
 パーティー会場である、とあるホテルのバンケットルーム。雛子は敦也と共に、ここにやって来ていた。
「食事を取ってきますから、敦也さんはここで待っていてくださいね」
 シャンパンで乾杯を終えた後、雛子は敦也にそう伝え、一人で立食形式のパーティーの坩堝に飛び込んでいった。
< 126 / 464 >

この作品をシェア

pagetop