恋人を振り向かせる方法
告白が全ての始まり

「あ〜終わんない!」
時刻は22時をまわっている。
深いため息を一つつくと、椅子にもたれ両腕を伸ばした。
25階から見下ろす夜のオフィス街は、ひときわ綺麗だ。
ネオンが煌々と輝いていて、今私がいるこの部屋から漏れる明かりも、誰かにとっては夜の景色の一部なのかと思うと複雑だった。

ここは、大手外資系IT企業の本社。
オフィスビルの2フロア分がそうであり、私がいる25階は主に営業部があるフロアになっている。
1フロアが広く、ここも普段の仕事をする場所以外に、応接室や会議室、それに個室が4部屋作られていた。
今夜の私の様に、残業を集中してやる為だ。

「それにしても終わらない。どうしよう•••。もうやめちゃおうかな。でも、明日の朝までに仕上げるとか言っちゃったし」

営業課から頼まれたデータの処理が予想以上に手こずり、肩も目も疲れ切っている。
とりあえずセーブをして、気分転換に社内オンラインを開くと、営業課の何人かはまだ社内に残っているのが分かった。
社員は、それぞれのスケジュールをオンラインで管理していて、それを共有しているのだ。
帰宅時にパソコンをシャットダウンすると色が変わる仕組みになっているから、社内に残っているかどうかも一目で分かるのだった。

「そっか。今夜はテレビ会議なのよね」

外資系という特性上、海外とのやり取りもあり、時差がある為に夜中に仕事をすることも少なくない。
今夜はそのテレビ会議で、役職者も含め、敦哉さんもメンバーに含まれているのだった。
敦哉さんは、私より10歳年上の35歳。
語学が堪能なやり手営業マンなのだ。
今、部長職に一番近い人と言われている。
そんな敦哉さんは、少しタレ目の甘いルックスを持ったイケメンでもあり、180センチの長身と肩幅の広い体格で、女子社員の憧れの存在だった。
加えて、優しくて親しみ易い雰囲気なのだから、モテないはずがない。

その敦哉さんとは、営業サポート事務という仕事柄、絡みが多く誰よりも接する時間が多い。
敦哉さんに恋する一人としては、かなり期待出来るポジションにいるつもりなのだ。

「敦哉さんも頑張ってるんだし、私も頑張ろう」

気合いを入れ直して、キーボードを打つ手を速めてみる。
敦哉さんの事を考えるだけで、モチベーションが上がるのだから。
もし、期待出来るなら告白をしたい。
敦哉さんと、恋人同士になりたい。
密かに本気でそう考えているのだった。
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